2022-2023年かふかふグローバルマクロ戦略

2022年かふかふグローバルマクロ概観

1.米ドル高、全面安(2022年3月~11月)

 2022年3月から2022年10月に強かったアセットは、米国ドルとエネルギーだ。史上みたことのない急速なFRBの利上げによってすべての資産が下落した、ある意味で分かりやすい相場であった。異次元緩和には異次元利上げがセットなのか。

 債券投資によるリスク分散も無意味であったことが世紀レベルで象徴的だった。激しい利上げが見込まれている間は、利上げが落ち着くまでドルを持っておくべきだったというのが単純な答えであった。需給的な理由からエネルギーやコモディティから持っておく選択肢もありえたが、リスクフリーな通貨「ドル」のほうが安全で合理的な選択だと考える。「Cash is Trash.」「ライフサイクル投資術」「債券比率を高めることでリスク分散」といった金融工学的なアプローチですら今回は誤りであった。

 私は、日本円、ゴールド、米国株の比率を高めた。日本円は主にボーナスを投資に回さなかった影響、ゴールドは利上げ期間中も上昇すると思っていたこと、米国株はなんだかんだROE高いし強いやろというお気持ち。PFは主にドル建て資産なので、円ベースではトントンであった。

直近1年の主要な価格変化

2.米ドル高ピークアウト(2022年11月

・米国CPIミス(2022年11月11日)

 FRBの利上げは、インフレ期待が主導した。2022年11月11日の米国CPIで初めて予想より低水準な結果が出たのは非常に印象的であった。ついにCPIミスがきた!!! グローバルマクロな相場の転換点はここだと思った。ドル円は150円をピークアウトし、金価格もトレンド転換した。ここまでが米インフレ期待による米利上げによる米ドル高、他全面安だったのだから、米インフレ期待の収まりによってすべての資産の流れが逆回転し始めた。ドルが下がるのだから、円は上がるし、金価格も上がっていった。

 私は、日本円、ゴールド、債券、米国優良株のアセット比率を高めた。特に、日本円は、ドル高ピークアウトの恩恵をわかりやすく享受でき、リスクフリーな通貨なので、シャープレシオがいいと思われた。ゴールドも同様だ。実際、日本円高やゴールド高に進行したため、まずまずな判断ができたと思っている。「先進国債券」や「米1-3年債券」や「米7-10年債券」は日本円の上昇に追い付けなかった。超長期債(EDV)や2621(米20年債ヘッジ有)は、リスクプレミアムが日本円の上昇を上回った。米国優良株は下落した。PFの債券全体ではトントン。

・中国株(総悲観・手のひら返し)

 意外過ぎて気づくのに数か月遅れたのが、中国株の底打ちや、ドイツ株、イギリス株の上昇だった。中国は、10月16日の中国共産党全国代表大会習近平が異例の続投し、ゼロコロナ推進策に従った官僚で主要メンバーを固めなおした。2021年2月に「プラットフォーム経済分野における独占禁止ガイドライン」が出て、中華ハイテク業界が利益減少し、2021年8月には「共同富裕」政策により更なる締め付けが続き、2021年11月には、レッドライン等の不動産への資金調達規制によって中国恒大集団がデフォルトに陥って、3年間のゼロコロナによる経済停滞といった下落要因がずっと続いていたからだ。下落し続けた中国株も、2022年11月の米CPIミスを機にトレンド反転している。まさか中国株が米CPIミスのタイミングで反転するとは思っていなかった。その後、2022年11月13日に中国人民銀行は貸出緩和策を、2022年12月7日にはゼロコロナ解消を、2023年1月7日には中国人民銀行は巨大IT企業の是正完了を発表した。これらマクロ的な反転要因より先だって、米CPIミスで底打ちしたのである。

・その他資産

 ドイツ株はエネルギー価格下落を機に反転、イギリスはトラス首相退任を機に反転といったところもあるのかもしれない。2023年1月になってからは、BTCまで上げ始め、利益減少を続けていたFBでさえ、100ドルから150ドルに上昇した。ドル安、他全面高である。

 2022年12月20日には、日銀が10年金利買オペ水準を0.25%から0.50%に引き上げ、これによって日本市場も活気づいた。市場金利は徐々に上昇し、債券が0.54%になっても売られ続けたのは印象的であった。即座に0.50%に張り付くものだと思い込んでいたが、後からデータを見ると数週間猶予があったから、そこはねらい目であった。日本のコアコアCPIも2%を超えて数か月経っていたので、ついに利上げか!と世界中のマーケット参加者が騒いでいた。一方で、イールドカーブコントロール当初の目標である、物価・賃上げスパイラルには到達していない。春闘やその他賃上げが続くまでは、イールドカーブコントロールを続けるというのが日銀の経済の論理である。「これは、賃上げではない」という黒田氏の発言を理解するのに1か月かかった。イールドカーブコントロールを続けるための債券市場へのテクニカルな調整という説明で、筋が通っているようだ。1月18日の日銀金融政策決定会合では、共通担保オペによって、さらに債券市場へのテクニカルに調整を続けた。利上げせず、債券市場も何とかする手段があったのかと驚いた。共通担保オペによって、金融業・実需は資金調達を続けることができ、しかも0.175%という低金利で借りれるのだから、銀行株はボーナスまでもらえたという構図である。

 

2023年上半期かふかふグローバルマクロ戦略

1.米ドル安・あるいは米ドルニュートラルな相場へ

 米CPIのピークアウトは、市場参加者全員の公知である。従って、大きく米ドル安に市場は推移したし、大部分を織り込んでいる、と思っている。ドルインデックスは、1月12日から1月30日まで落ち着いている。この期間に、日銀政策決定会合で何もしないサプライズ、米PPI前月比0.5%低といった激しい発表があったにも関わらず、ドル円は大きな変化をしなかった。すでに大部分を織り込んでいるのではないか。

 ドル円の水準感をどう考えるべきだろうか? 利上げ時の水準を確認すると、2022年5月6日のFOMC金利0.75%、年末金利2.5%予想で、1ドル130円を織り込んだ。一方で、2023年1月現在からみた2023年年末の予想金利は4%(市場)や5%(FOMC)といった水準である。しかも、市場は、日本金利が1%を織り込んだ時に、1ドル128円であった。金利差3%程度でも128円だと市場は言っている。

 聞こえてくる「声」は、ドル円110-115円が多い。しかし、日米の経済統計や中央銀行、過去の市場参加者の動向を見るに、125-130円というのは、案外収まりがいいのではないんだろうか。したがって、かふかふ2023年末の米ドル予想は、115-130の範囲で仮置きしている。

 気持ち:米ドルニュートラルに130円を維持してくれたら為替考えなくてよくて楽だし、本業の利益(ドル連動)増し増しでありがたいのだが。

2.かふかポートフォリオ2023戦略

超長期でみた株式80%、債券10%、ゴールド10%を目指して、機動的に日本円を転換していく。変更なし。1年間大きく買ってないから日本円が30%くらいになってきた。

日本株

 今更だけど、2022年10月ごろから、日本株というものを調べた。円高読みで持つべき資産が分からなかったからだ。日本市場全体は、円安で利益増し増しな半導体連動市場なので、円高反転を待ってもずっと買う気がしなかった。

 1489(Nikkei225高配当50,経費率0.3%、配当5%)や1651(Topix100高配当40,経費率0.2%、配当3%)は、コロナショック後は常にひたひたと上昇していて良かった。銀行・鉄鋼・商社といった超バリュー(PE ratio 5多め)・そこそこ内需・安定銘柄群だ。PFの1%ほど買った。

中国株

 長期では持ちたくない政府リスクがあるが、持続的な高い上昇を見せている市場である。2021年にはもうやらんといったが、「2023年1月7日、中国人民銀行は巨大IT企業の是正完了」をきいて、また買った。PFの1%くらい。

米ハイテク

 1月30日現在、MSFTやTSLAの決算悪いのに急騰し、相場の底を過ぎたと思って買い増した。PFの数%だ。高金利が不利なのは変わりないセクターなので、適度に手放す。

ゴールド

 買い続けてPFの10%程度くらいになった。

債券

 米金利上昇したのもあり、PF理論的にも株式と逆相関することからPFの10%を目指している。米債券が日本円に負けているうちは買いたくなくて、円建てで考えると、全然買い場が来ない。PFの1%程度。米ドル定期預金が5.0%なので、ドル安待って買いたい。あと米長期債券買いたいが、売買手数料無償がなくて、手数料のかかるEDVになってしまうのが迷いどころ。先進国債券の投信は良い選択肢。

実は、ドル安の影響で、新興国債券が最も上昇している資産であるが、買い付け手段は未検討。新興国債券の不安定性も長期持つのが難しいが、買い付けポイントというのは探せばあるかもしれない。